12月号の【見どころ】
東京工業大学の山口猛央教授によれば、“巻頭言”=『社会に必要な材料開発とは』で、次のように発言している。
「エネルギー・環境問題の解決、後期高齢化社会への対応、さらに世界的な視点でのQuality of Lifeの向上など、今後も科学技術、特に機能材料や新しいデバイスへの期待は大きくなる一方です。しかしながら、めまぐるしく変わる実世界で問題点を見つけ、解決する手段をごく短期間に開発することは難しい状況です。」「最近、ビッグデータやIoTなど情報科学を用いれば、逆問題で何でも解決できると聞きますが、通常の情報科学では既知の材料の再発見や線形な組み合わせが予測できるだけです。新しい材料開発には無力です。材料の機能や物性は、異なる元素や分子の組み合わせ、微細構造の制御で大きく変わります。」と。その一方で、「化学工学は、プロセスの中で物質とエネルギーの流れを最適化する学問として発展してきました。化学工学の材料研究はプロセッシングに偏っていますが、本来は化学に立脚したシステム工学です。材料自身の中で化学工学を行うことも可能です。材料やデバイスをシステムとして捉え、分子からデバイスまでを階層ごとに繋げて考え、社会にとって真に必要なデバイスを設計・開発することが新しい化学工学の一つの出口と考えている。」と指摘する。
「材料の中のシステムとは、Å-ナノ-メソ-マイクロ-ミリ-メートルと大きさの異なる階層を繋げて考えることです。材料物性をアウトプットとし、その中に含まれる分子を素子と考え、各階層で微細構造や相互作用の影響を考慮して繋げます。これらの物性は複雑ではあっても物理化学に支配されるので、モデルで表現できます。必要なパラメータを量子化学計算や実験などの高コスト手法で求めることはありますが、システム全体を高コストに予測することはありません。互いの影響は、より簡便なモデルや実験値からのフィッティングで把握すれば、物性や機能が短期間に低コストで予測できます。」「材料の物性や機能を予測できれば、材料と材料を組み合わせたデバイス性能も予測でき、システムの境界条件を変えれば社会と繋がります。未来社会の予測や現実の問題点の解析には大量の情報を処理する情報技術が有効なため、情報技術と組み合わせれば、社会へのインパクトや普及に必要な性能・コストが予測できます。ここまで繋がれば逆問題として材料設計が可能になります。」「計算科学との違いは、ボトムアップに固執せず、システムとしての階層全体を俯瞰的に見る目を大切にし、異なる単純な計算手法や情報技術を大胆に使う点です。また、材料をシステムとして考えるので、社会と繋げ、プロセスも考え、実学として進めることが可能です。」と。最後に、「ビッグデータやIoTと言う言葉を聞きますが、材料研究で本当に必要なのは、物理化学に立脚したシステム的な設計であり、新しい化学工学であると確信しています。」と強調している。
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ITEM NAME | 化学装置 2017年12月号 |
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ITEM CODE | PAP201712-f~PAP201712-m |
PRICE | 1,848~22,176 円(税込) |