【見どころ】
今月号の『溶存CO2 水の“電解”によるCO2の還元・メタノール合成』の解説(環境・エネルギー化学アドバイザー・村田逞詮氏)では、「植物の葉の“気孔”は、光合成・炭酸同化作用、蒸散作用、呼吸作用など植物が必要とする“ガス交換”の器官である。したがって、“気孔”から取り込まれるCO2は、根から吸い上げた水と会し、水に溶存する。これによって、光合成・炭酸同化作用は、水(H2O)、並びに、溶存CO2 への“光酸化”によると推察できる。しかし、CO2 は、溶存CO2 と雖も、“酸化残渣”であるから、それ以上の“酸化”は無理で、“光酸化”の対象は、水(H2O)と判断できる。“水の酸化”は、“光酸化”に限らず、“水の電解”でも可能である。“水の電解”の陽極反応、“電子の引き抜き”は、まぎれもない“酸化”である。陽極反応である“酸化”は、“光酸化”と同様に、酸素、O2 を発生する。まず、以上から、自然界の“光酸化”は、“水の電解”に類似すると推察できる。そして、自然界の“光酸化”では、“水の酸化”で、酸素、O2 の生成と共に、発生期の原子状水素(・H)が生成され、その水素により溶存CO2 が還元され、アルコール類や糖類が合成されている訳である。したがって、工夫すれば、同様に“水の電解”による“水の酸化”でも、アルコール類や糖類が合成され得ると、推察した。実際には、“水の電解”の陰極でも、発生期の原子状水素(・H)が生じるが、そのままでは分子(H2)化してしまう。そこで、“溶存CO2 水の電解”、ないしは、“炭酸水の電解”ならば、発生期の原子状水素(・H)は、還元剤足り得るか? もろもろ考えた。『高効率フェントン法を利用するCO2の還元アルコール化研究』の研究から、発生期の原子状水素(・H)は、“還元鉄イオン”(2価鉄イオン)でマイナス水素イオン(ヒドリド、すなわち、H-)に還元され、そのマイナス水素イオン(ヒドリド、すなわち、H-)によるCO2の還元で、メチルアルコールやエチルアルコール等が生成することを実証していた)ため、上記判断で、『“溶存CO2 水の電解”、ないしは、“炭酸水の電解”ならば、発生期の原子状水素(・H)は、還元剤足り得る』は、“理に叶う”とした。しかし、水で比較的容易に酸化してしまう鉄を電極(この場合、陰極)にするわけにはいかないため、イオン化傾向の低い金属の中から、現段階で最適と判断したものを選ぶことにした。その一方で、“熱力学的化学”を“化学”の“物理学的基礎”(“化学”の学問分野で言えば、“物理化学”)と考え、実験実証があるにもかかわらず、“CO2の還元、有用有機物化”に反対する御仁(学識者にもかなりいる)への対応も考え、次の文言を用意した。『気体のCO2の“熱力学的実体”である“エンタルピー”Hco2(熱力学上の“ポテンシャルエネルギー”、すなわち、“内部エネルギー”Uco2と、CO2分子の“運動エネルギー”PVとの和)を“熱”⊿H(エンタルピーの差分)を稼いで、例えば、メチルアルコール(その“熱力学的実体”である“エンタルピー”HMe)にまでにするのは、識者の指摘を受けるまでもなく、無理である(※1)。』[(注)※1:気体のCO2に、外系からの“仕事”で“熱エネルギー”を取り込んでも、たかだか“ポテンシャルエネルギー” すなわち、“内部エネルギー”Uco2のレベル指標である“絶対温度”TとPVとのボイル・シャールの法則に基づく相互関係(PV / T= 一定)が変わるだけで、CO2の“化学的実体”(“共有電子対”を媒介とする原子間結合)は、なんら変わらないからである。]だが、溶存CO2 に“電子エネルギー”(“マイナス水素イオン”を介する)を付与して、“化学的実体”(“共有電子対”を媒介とする原子間結合)を変えること、すなわち、“化学的実体”を再編成して、例えば、メチルアルコールを合成することは、筆者らが実証済みのように、それほど、難しくはないのである。ちなみに、メチルアルコールは1モルのCO2 への“6電子還元”で得られ、エチルアルコールは2モルのCO2 への“10電子還元”で得られる。
以上の総合判断の下、人工的な“光合成”の模擬(CO2の還元・メタノール合成)は、溶存CO2 水への“電解”でも可能と結論した。ちなみに、“電解”は、マイクロリアクターを利用するきわめて小規模な“人工光合成”(CO2の還元・メタノール合成)とは異なり、大型化が可能なので、将来は“工業化”が期待できるとも判断した。)」と。
…以下略…。ご興味のある方は9月号の本文にて、この続きをご覧ください。
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ITEM NAME | 化学装置 2015年9月号 |
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ITEM CODE | PAP201509-f~PAP201509-m |
PRICE | 1,848~22,176 円(税込) |