【見どころ】①
2015年新年号の“巻頭言”では、化学工学会・会長(京都大学大学院・教授)の前一廣先生が登場。ここでは、『新たな化学技術への飛躍を目指して』の提言を頂いている。以下に、抜粋紹介する。
「現在、世界では資源、エネルギー争奪戦が水面下で進行している一方、温暖化、異常気象にみられるように地球規模の環境問題がますます懸念される状況にある。また、アジア、アフリカ、南米諸国の発展も著しく、20世紀と同じスタイルで工業化社会へと展開されている。これは、有限な地球全体の資源の配分が大きく変わってくることを示唆している。…(中略)…資源のない日本においては、消費構造改変によるライフスタイルの変革、産業融合などによる地域産業活性化などの大きな社会産業構造の革新が必須であることを強く示唆している。化学産業に焦点を絞ると、これまで同様に技術でリードするための装置設計、操作のイノベーションはもとより、自然環境までシステムバウンダリを拡げた技術、世界の食糧や水の安定生産や農林水産業の新たな発展を視野に入れた、1次産業との有機的な連携の模索、真に本質安全な装置の設計、運転技術の深化など、たくさんの生産技術に係る項目を開拓する時代に突入している。化学工学技術者は、化学工場、化学産業の枠から飛び出し、得意とするシステムという視座から、社会システム、人間行動、感性まで包含した、ソリューションテクノロジー、パッケージエンジニアリングといったハード、ソフト、情報コンテンツを結合した形での技術、システム展開を図り、社会に貢献する担い手として、大いに活躍できる時代が到来したと考えている。…この大きな変化の兆しを捉え、化学工学会では一昨年、75周年を迎える際に、次世代における化学産業のあり方、それに資するための「今後の化学工学会の方向性」の提言を纏めている。提言では、現有の技術立国日本の地位の担保しつつ、石油原料から多様な原料の複合化、産業融合などの新たな展開を図るために、1)エネルギー原単位の革新的低減技術、2)プロダクトテクノロジーの深化、3)革新的本質安全設計とリスクマネジメント、4)革新的操作技術が重要であるとしている。詳細は化学工学会Webサイトを参照されたい。これらの項目を進展させるには、非線形、非平衡操作、機能を集積した装置工学など、新たな化学工学学問領域の進展が必要であるが、それらを具現化する化学装置の開発が必須となる。すなわち、上述の新化学産業の展開には、新操作概念を満足する新設計概念の創出、それに基づく化学装置の開発がなければ達成できない。このことは、これまで主として装置サプライヤーであった化学装置関連企業が、バリューチェーンの中でセットメーカーとなり得る可能性を示唆している。…新時代の化学装置技術を担っていくには、出口企業との協業、新化学工学学理の的確な導入などを行いながら技術者人材を育成していく必要がある。化学工学会は産学交流が盛んな学会である。また、「開発型企業の会」に代表されるように、産産連携による情報交換も充実している。「知らないことは何もできない」ので、技術者各位には会員になって頂き、「新技術の論理を合理的に習得する」、「各位の技術のレベルを客観化する」、「人的交流でビジネスチャンスを作る」という機会を得て頂きたいと願っている。…」。
【見どころ】②
特集総論の『開発型企業の“事業戦略と技術展開”―解説 ビジネスモデル―』
(小松昭英氏)では、「事業戦略とイノベーション」「技術展開とビジネスモデル」「社会環境の進展」「ビジネスモデルの成長」「ビジネスモデルの発展」について事例を含めつつ詳しく解説。さらに「まとめ」では、“…化学産業の基盤ともいえる石油精製業および石油化学業は行政の有無に関わらず、業容の縮小を求められており、当然のことながら化学産業も規模の拡大を求めるならば(生き残るためには、拡大は有用な手段といえよう)、経済成長の著しい海外市場への下流産業の海外進出にあわせて、海外での原料と市場の確保は緊急の課題であり、その課題解決にはビジネスモデルの拡大と革新が不可欠である。…ビジネスモデルの将来を考えるとき、IoTを抜きにして考えられない状況を迎えている。海外との協働を推進しつつも、ともかく強力なビジネスモデルを構築しなければならない状況にある”と指摘する。
【見どころ】③
特集総論の『日本の挑戦;日本のIndustery4.0 ―セキュアなモノづくり革新―』(村上正志氏)では、「ドイツで始まったIndustrie4.0」「米国でのIndustry4.0」「インターネットが汚れている」「プライベートクラウドの利用」「安全と制御システムセキュリティとリスクアセスメント」「制御システムセキュリティ対策」「セキュア技術を支える技術」「振る舞い監視を実現する技術」「クラウドに構成するモデリング設計」「日本のIndustry4.0は、どこに強みを持てばよいのか」「人材育成の新しい形」について豊富な図面を駆使して解説。「まとめ」では、“日本の生産技術の多くは、工場と共に、円高によって、中国へ、中国の人件費の高騰により、東南アジアにシフトして行った。円安になって工場が日本に戻ってくるかというとそうはならない。地産地消というのが日本の実情である。東南アジアの工場は、世界市場で生産していることから、現地の方々に生産技術は積み上げられている。このような中で、『セキュアなモノづくり革新』を短期間で実施できれば、リーディングのポジションは、まだ確保できる”と結論づけている。
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ITEM NAME | 化学装置 2015年1月号 |
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ITEM CODE | PAP201501-f~PAP201501-m |
PRICE | 1,848~22,176 円(税込) |