■今月号の見所
7月号の特集分;『化粧品の最近の市場動向と技術傾向』(近畿大学・鈴木高広氏の特集本文より)
曰く、国内化粧品市場の概要について、以下のように述べている。
「国内化粧品の売上げは,景気の動向にあまり左右されないところが強みである。リーマンショックや東日本大震災により景気が低迷したここ数年も,化粧品は堅調に売上げを維持してきた。だが,景気に明るさのきざしが見える時には,さほど恩恵を受けないことがジレンマとなる。アベノミクスによる日本経済回復への期待が増すが,国内化粧品に先行きの明るさは見えない。この背景には,化粧品業界を取り巻く三つの課題がある。一つは,少子高齢化による消費者人口と高齢化による消費規模の減少。二つ目は,インターネット販売網や新興国で製造する廉価品の輸入拡大による商品価格の低廉化。グローバル化した流通網は割安な製品を世界中から調達し,大衆品は低廉化へと突き進む。そして三つ目は,欧米企業に出遅れる海外展開である。国内各社の海外展開は堅実だが顕著ではなく,M&Aを活用して販路を拡大する欧米企業が,新興国の売上げを急速に伸ばしているのとは対照的である。
国内の子供の人口比率は至上最低となり,この先も更新し続けることだろう。全人口も僅かながら減少し始めている。少子高齢化社会へのシフトは,予測された最悪のペースで進行しており,化粧品の消費者人口が確実に減少することは,十年前と現在の子供の総数を比較すると容易に理解できる。消費者人口の低下とともに,化粧品消費者の平均年齢が高齢化すると一人当たりの年間購入額も減る。さらに,ネット販売や通販による廉価品の普及により,国内の化粧品市場規模は現在よりも2割~3割程度縮小するのではないかと懸念されている。
一方,海外の化粧品市場は大幅に拡大することが見込まれる。急伸する中国の化粧品市場は,停滞する日本に代わりアジアの中核市場となりつつある。欧米企業は日本市場でシェアを伸ばせず,長年アジア市場で苦戦を強いられてきた。ところが,成長が期待できない日本市場はもはや魅力的ではない。中国の成長を見越し早い段階から進出した仏ロレアルは,中国市場でシェアトップとなり,同社のアジア市場全体の売上げは日本国内の販売額の十倍に達する。日本には化粧品のハイテク技術の開拓や,アジア人の肌に適した製品開発の場としての役割を期待しており,アジアの商品開発の研究拠点と位置付ける。日本の技術で日本人の肌のために開発した製品を,中国やタイやインドネシアで大量に売りさばくフランス企業のアジア戦略が的を射たのである。
中国は日本を追い抜き,米国に次ぐ経済大国に成長した。とはいえ,国民一人あたりのGDPは日本の13%(2012年)に過ぎず,生活水準の向上を望む中国の大多数の国民による貪欲な経済規模の拡大志向は続く。化粧品の消費額は生活水準に依存するため,中国市場は今後も大幅に拡大する余地がある。同様に,インドやインドネシア,タイ,マレーシアなどの東南アジアの新興諸国も,化粧品市場がますます拡大することだろう。また,今後はアフリカの経済成長も見込まれる。拡大の一途を歩む中国経済は,資源やエネルギーの需要も膨大となる。中国による化石燃料や鉱物資源の調達資金が,アフリカ大陸に大量に流れ込むと予測される。その結果,同諸国の経済発展を急速に促し,化粧品市場も大幅な成長が見込まれるのである。
国連人口部による世界人口推計では,現在約70億人に達した世界の人口は今後も発展途上国を中心に増え続け,2050年には90億人を超えると予測されている。海外諸国の人口増加と経済発展により,世界の化粧品市場が拡大することは明確な事実となるであろう。今後も成長が予測される海外市場への展開が,国内各社の成長の鍵を握る。」と。
□7月号分;巻頭言より=日本水フォーラム事務局長の竹村公太郎氏、曰く、 『未来社会のエンジン』として必要なこととして――。
「未来を俯瞰すると、未来社会は近代の反語となる。
浪費型ではなく低炭素型、集中型ではなく分散型、画一性ではなく多様性の社会である。低炭素で、分散型で、多様性の社会とは、日本各地の地域社会の再構築である。その地方再構築の核となる地方自治体も中央行政と同様にタテ割りで苦しみ、狭い閉鎖性に苦しんでいる。この呪縛を突破していくのが民間とNPOとなる。民間の資金力とNPOの自由な行動力が、地方自治体と連携することによって、各地域の社会再構築のエンジンとなっていく。
今、地方社会には多大な資金が眠っている。その資金を、短期の回収投資ではなく、長期の地域社会へ投資することで、安定した資金回転が起きていく。
若い世代は、旧世代が思っている以上に地域社会に役立つ活動を願っている。
この潜在的な次世代の思いを、より組織的にするような仕組みが必要となっていく。」と。
また、「世界の中の日本』としてのあるべき姿勢として――。
「日本の強みがモノづくりであることは変わらない。しかし、途上諸国の物づくりの台頭は著しい。
日本国内で大量生産して、遠くまで船で運び、売りまくるビジネスは終わった。
日本は、日本人しか造れない重要部品を国内で造り、世界に提供していく。工業の最終製品は、グローバルなネットワークと連携して生産していく。
未来の日本国内の主たる産業は、グローバル化されない日本列島に根ざした産業、土地から離れられない産業となっていく。地形と気象の多様性と自然生態系の多様性に 恵まれた日本列島から離れられない産業は、農林水産業である。ただし、近代化で犯した肥料大量投入のエネルギー消費型ではない。物を循環させ、生態系を凝視した最先端技術と情報を駆使した農林水産業である。未来の循環型の農林水産業は世界の注目を浴び、世界中から人々が訪れる。それが真の日本の観光産業ともなっていく。」
と氏は提言している。
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ITEM NAME | 化学装置 2013年7月号 |
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ITEM CODE | PAP201307-f~PAP201307-m |
PRICE | 1,848~22,176 円(税込) |